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介山忌80年

2024/4/25 木曜日

  今年、4月28日は中里介山没後80年である。介山は近代文学を通じて破格な文学者のひとりであったが、文学者としての生涯を、資本主義的な文壇文学に抵抗し、その圏外に生き続けた近代の日本文学史上まれにみる、雄大なスケールを持った文学者であった。                                                                

 その作品『大菩薩峠』は、かつて一世の読書界を風靡した一大ロマンであり、近代の文学史上に永久に記録される作品として、今日なおも民衆のうちに生き続けている。それは一つの時代を、深く強く生き抜いた作者の作品として、それが古いとか、新しいとかより、時代の問題や課題を根本的且つ独創的なかたちにまとめあげた点に、注目すべきであり、もちろん介山の作品が、そのまま私達の現代生活に役立つものとは言えないが、しかしその作品が、偉大な国民文学として、その時代の喜怒哀楽を最もよく現わしているものの数少ない中の一つだとすれば、現代の喜怒哀楽に対処する私たち自身の生き方を、その作品およびその生き方から学び取ることができると思う。                                  

 しかし、こうした介山の文学者としての業績については、従来からごく一部の人々の間でのみ重要視されていたが、現在それにふさわしい充分な評価検討を受けているとは決して思われない。分断や矛盾だらけの現代だからこそ、私たちは再び、介山に大きな関心をはらわなければならないのではないか。